疲れた時には、
甘い物が一番だから…ね?

 

仕事の後のほんの一息

 

カタカタとパソコンのキーボードを打つ音。
その音の主はキョウジュではなくカイ。
珍しく四角い小さなメガネなどかけている。

ここはカイの部屋の中。

今カイは仕事中。

それを知っているだけに、ベッドに寝転んでいる者は暇そうにしていた。

「カイ……あとどれくらいで終りそう?」
「もうすぐだ。待っていろ」
「……………解ったわよ。
 …ちょっと、出てくる」
ヒロミはベッドから降りて立ち上がると部屋を出て行った。
それをカイは不思議そうに見送ったが、すぐにディスプレイに目を落とす。

キーボードを打つ音が、いやに、部屋に、耳に、響いて。

なんだか少し落ち着かない気分になって。

早くヒロミに戻って来て欲しい気持ちになった。

どれくらい経ったのか記憶にない。
ようやく仕事も一段落ついた。
メガネを外し、伸びをする。
肩凝ったかな? などと普段とは似つかわしく事を思いつつ。
そんな事を考えていると、部屋のドアがノックもなしに開いた。
入ってきたのはヒロミ。
彼女の手にはカップを乗せたお盆があった。
「あ、終ったのね。ちょうどよかったわ」
「?」
「はい、コーヒー。ブラックでいい?」
「…ああ」
にこっと笑いかけられてカイは心臓の鼓動が少し早く脈打つのを感じた。
いつもこうだ。
彼女の笑顔には不思議な力がある。
だがそれは決して不快な物ではない。

――――心地よい。

それが似合っていた。
カイは出されたコーヒーに口をつける。
「ヒロミが淹れてくれたのか?」
「うん。ほら、疲れた時には休息が必要でしょ」
「そうだな。…………美味い」
微笑んで賛辞の言葉を述べる。
嬉しそうに、彼女が笑った。
それにカイは愛しさを覚えた。
コーヒーを飲み干すと、カイは顔を上げてヒロミを見つめた。
「――もう一つ、疲れによく効くクスリが欲しいな」
「? 何?」
聞き返すと、カイはヒロミの腕を掴んで引き寄せた。
バランスが崩れそうになって椅子の手すりにヒロミは手を置く。
それを支えて、カイは顔を近づけた。

空中で重なる二つの柔らかい物。

それは数秒で離れた。
「……バカ……」
「これが、一番のクスリだからな」

するり、とカイの手が彼女の腰に回る。

コツン、とカイの額が彼女の額とぶつかる。

「今日は、夕方まで離さないからな」
カイは至近距離で囁くと、微笑んだ。
それにヒロミの顔が赤くなった事は――――記すまでもない。



疲れた時には甘い物。
それが一番の特効薬。



〜fin〜


またやってしまいました…カイヒロ〜vv
むしろこっちの方が本領発揮な気が。
砂吐きそうなぐらいに甘々ですが、どうでしょう?
キスおっけぃなのか解りませんが、少しでも萌えになってればよろしいです。






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