春眠  −アカツキヲオボエズ− 』

 

春の日差しが差し込む静かな公園。バイフーズのマオはここが一番お気に入りだった。
「あっ!いたいた。こっちにおいで」
マオは木陰にいた猫の親子の姿を確認すると持ってきたエサを地面に置いて手招きした。
猫たちもマオの姿を確認すると人懐っこく寄ってくる。
いつもの猫好きな、エサをくれる人だとちゃんとわかるらしい。
「もう、そんなにがっつかなくてもいいのにさ。・・・ん?」
顔を上げたマオは仔猫の一匹が不可解な行動をしているのに気がついた。
一番小さいその猫は木陰にまだ仲間が隠れているのを連れ出そうとしているような仕草をしていた。
「ちょっと待ってて、今あたしが友達連れてきてあげるよ」
マオは仔猫にそう話しかけると木陰の中に入っていった。
しかし木陰の向かうには猫は一匹も見あたらない。いたのは大木を背もたれにして座っている人物一人・・・。
「か・・・い・・・?」
マオは思わず近寄った。しかしカイは身動きひとつしない。微かな寝息が聞こえることからどうやら眠っているようだ。
「あの子が言ってたのはカイのことだったんだ。でも、カイが寝てるところ見たのって初めてかも・・・」
マオはカイに近寄って寝顔を見ていた。顔が触れ合うか触れ合わないかの近距離まで近寄ってもカイは目を覚まそうとしなかった。
「(・・・きれい)」
普段あんなに誰も寄せ付けないカイがこんなに無防備な表情で眠るなんてマオにはにわかに信じられなかった。
でも、そんな様子も自然で見る者を不思議と引きつける。
マオは好奇心をそそられてそっとカイの前髪に触れた。
「・・・ん」
「(やばっ!起きちゃった!?)」
マオは慌てて手を引っ込めたがカイは起きる様子は見せなかった。しばらくするとまた静かな寝息を立てる。
「(ホッ・・・)」
マオはカイがまた寝付いた様子を確認すると、慎重に起こさないように手を伸ばした。
カイの髪は日光でほんのりと暖かくなってさわり心地が良かった。
マオは今度は頬に触れようと手を動かしたが・・・。
「・・・うん?」
二度目の正直。今度は本当にカイは目を覚ました。
「マオ・・・?」
「カカカカ、カイ!!」
すっかりパニックになったマオは慌てて逃げようとしたがカイがそれを許すはずはなく、寝起きとも思えない素早さでマオの手を掴んだ。
「きゃあ!離して離して!!」
「・・・貴様、よくも俺の寝顔を見たな」
「ご、ごめんなさいごめんなさい!!許して」
「許さん!!お仕置きだ!」
そう言うとカイは掴んでいたマオの腕を引いて自分の元に引き寄せた。
急に引き寄せられたマオはバランスを崩してカイの腕の中に倒れ込んだ。カイの腕は暖かかった。

「しばらくこのままで、今度は俺にお前の寝顔を見せてもらうからな」

 


カップリ投票で8位になれたのが嬉しかったのでカイ&マオ小説です。
春なので・・・やっちゃいました。
こんなシチェーションのカイ&マオ見たかったんです。
趣味に走ってごめんなさい。






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