フェアリーウィング(妖精の羽)

 

「じゃあ、元気でな。マチルダ」
世界大会後、解散が決定したバルテズソルダ。
ミハエルは孤児院に引き取られることになったマチルダに最後の別れを告げていた。
ミハエルは時間を確認すると、港に向かった。

港には大勢の人が見送りに来ていた。その中にミハエルの知っている顔は一つもない。
クロードとアーロンはもう自分の国に帰ってしまっていた。ただ、マチルダは・・・。
(元々、かわいそうな身の上だったな)
ミハエルはため息を吐いた。それと同時に船が出航する。
船は岸から徐々に離れていった。ミハエルは甲板から陸地を見ていた。すると・・・。
(あれは・・・!)
港に駆けつけてきたのはマチルダだった。懸命にミハエルに何か訴えている。
まず自分を指さして、右手の指を縦にその指を左手で隠すようにして前に出す。手話だ。
「『私を・・・攫って』?」
マチルダは何度かそれを繰り返すと海の中に身を投げた。
「マチルダ!」
それを見たミハエルは慌てて自分も船から飛び降り、マチルダの元に急ぐ。マチルダは泳げないのだ。
「バカな!何でこんなマネをしたんだ?」
「・・・だって、ミハエルと一緒じゃなきゃ、私幸せになれる自信がなかったの。ずっと側に、いて欲しかったから・・・」
マチルダはそれだけ言うとミハエルの腕の中で気を失った。
それと同時に船員が二人を救出して船に乗せる。
マチルダは船員が掛けてくれた毛布の中で静かに目を閉じていた。
「マチルダ・・・。こんなになるまで俺を思っていてくれていたのか」
マチルダの髪に付いた水滴を拭き取るとミハエルはそっと抱きしめて言った。
「もう、二度と離ればなれにしない。ずっと側にいてくれ」

 


ミハ&マチ小説です。
結構マイナーですがこのカップリも好きです。ED「風の吹く場所」のイメージで書いてみました。
手話を使うのは大人しいマチルダちゃんだけしかできないことなので・・・。うまく仕上がって嬉しいです。






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