『忘れないで』
「ミンミン、今日もご苦労だったね」
『バレンタイン特別ステージ』の後、珍しくヴォルコフがミンミンに声を掛けた。
「本当に上出来だったよ。これは、今日のご褒美として受け取ってもらえないかね?」
そう言ってヴォルコフが差し出したのは綺麗に包装された小さな包みだった。中身は聞かなくてもわかっている。
プラチナのリングが入っているとミンミンは昨日、偶然聞いてしまったから。
「わぁー!ありがとう!ミンミン嬉〜い♪」
ヴォルコフはミンミンの返事に満足げだった。
「ミンミン、私からも受け取ってもらえないか?」
今度はガーランドが手に包みを持っていた。今度は長細い包みだった。
「あらら、珍しいわねー。真面目ちゃんなガーランドがあたしに贈り物なんて。まっ、とりあえずありがとね♪」
ミンミンは二つのプレゼントを手に抱えるとエレベーターのスイッチを押した。
「ミンミン、良ければ今夜私の部屋に泊まりに来ないか?」
ガーランドが少し遠慮気味に声を掛ける。ミンミンはすぐに首を振った。
「パスパス。だってガーランドのシャツぶかぶかなんだもん。あんなんじゃ眠れないもーん」
自室に戻ったミンミンはさっきもらったばかりのプレゼントを広げていた。
プラチナのリングにピンクダイヤのペンダント。それぞれヴォルコフとガーランドからもらったものだ。
「やーっぱ、男の子が持ってくるものってこんなのばっかしね」
ミンミンはため息を吐いた。
−ガンガンガン!
激しく窓ガラスを叩く音にミンミンは慌てて窓の方に駆け寄る。見ると案の定、ミステルが息も荒く窓の外にいた。
「早く開けてよ!このままだと落っこちちゃう」
ミンミンが窓を開けるとミステルはいつもの鳥のような仕草は何処へやら、ミンミンの部屋の床に倒れた。
「・・・大丈夫?」
「ま、まぁね・・・。こ、これ・・・約束の・・・」
ミステルは震える手でミンミンに何かを差し出した。
「『わすれな草』・・・覚えていてくれたんだ」
ミンミンは前に「何処にでも飛んでいける」と自慢げに言ったミステルに「『わすれな草』を取ってきて」と言ったのだ。
「忘れはしないよ、ミンミンのことは・・・忘れた時なんて、ないんだから・・・ね・・・」
ミステルはそう言い終えると静かに目を閉じた。
「ミステル!?ちょっと、ちょっと!」
ミンミンは急いでミステルの胸に耳を当てた。心臓の鼓動がすることから見るに、どうやら眠っているようだ。
「良かった・・・」
ほっと息を付くミンミン。
「あたしもね、ミステルのこと忘れた日はないんだよ」
『わすれな草
花言葉は『私を忘れないで』』
ミス&ミン小説です。最近このカップリ好きです。