『千寿菊』
ボクが小さい頃、お姉ちゃんはいつも口癖みたいに言っていた。
「あんたの薔薇色の髪がうらやましいわ」
理由はわかっている、お姉ちゃんは自分のけばけばしい(ボクはそう思わなかったけど)オレンジ色の髪が大嫌いで、逆にボクの赤い薔薇色の髪が好きだったんだ。
「どうして?ステキな色じゃない。ボクの髪よりずっと綺麗な色だと思うよ」
「だって・・・、こんなオレンジ色なんてネーミング的にもナンセンスじゃない。せめてラウルみたいに花の名前が付く色がよかったわ」
そう言ってお姉ちゃんはため息を吐いた。
数日後
「ラウルー!ラウル、どこ行ったのよー!」
ジュリアは今朝から姿の見えない弟を必死で捜していた。芸の練習をするハズが、パートナーのラウルがいないのでやろうにも出来なかったのだ。
「あっ!お姉ちゃん、いたいた」
「ラウル!」
テントの陰からひょっこり姿を現したラウルにジュリアは思わず目をつり上げる。
「どこ行ってたのよ!芸の練習するって言ってたのに!!」
「お姉ちゃん!ちょっとこっち、付いてきて!!」
ラウルはそう言うとすぐにジュリアに背を向けて走り出した。
「あっ!ちょっと待ちなさい!!」
「はぁ、はぁ、もういつまで走らせるのよ。ラウル」
「着いたよ。お姉ちゃん、見て見て!!」
そう言ってラウルが指さした方向には・・・、
「・・・金貨?」
黄金色の草原が続いている光景にジュリアは思わず目をこすった。
それは金貨ではなかった。黄金色の丸い花・・・。
「マリーゴールドだよ」
マリーゴールドの花の草原だった。花は満開で輝かしい黄金色を誇っている。
「へぇ、綺麗ね」
「お姉ちゃん、この色どこかで見たことない?」
「え?」
ラウルに聞かれてジュリアは思わず首を傾げた。こんな濃厚な黄色なんてどこで見ただろうか?このオレンジより少し薄目の色なんか・・・。
「(・・・オレンジより薄め?)」
その結論に達したジュリアは急いで手鏡を取り出して自分の顔を映した。
「わかったでしょ。お姉ちゃんの髪と同じ色なんだよ」
ラウルの言うとおりだった。ジュリアの髪はオレンジより少し薄目のマリーゴールドと同じ色だった。
「ボクの髪は薔薇色で、お姉ちゃんはマリーゴールド色。これならステキだよね」
「そのために朝からいなかったの?」
「そうだよ」というようにラウルは頷いた。
「いちいちそんなあたしの愚痴なんて気にしなくてよかったのに・・・」
「でも、お姉ちゃん悩んでいるみたいだったから」
ジュリアはラウルの前髪に触れると愛情込めておでこをつついた。
「おバカさん・・・」
end.
ラウ&ジュリ小説でした。(初)
自分も弟いるので結構書きやすかったです。
これ自分の経験から書いたんですけど、弟クンって結構感受性強いんですよね。
あの二人は小さい頃のネタが合ってたので・・・。
それでは、“再見”