『春うらら・・・』
木ノ宮家から徒歩十分位の場所にある高原。町の様子全体が見渡せるその場所は今、桜の花が満開だった。
「いいよな〜春は・・・。気持ちいいよな〜」
「剣道の稽古さぼってよくそんな事言えるわね」
草原の上に寝ころんでいたタカオにヒロミは呆れ顔をする。
ヒロミはタカオが脱走するのを見つけてしまったのでタカオに半ば強引にここに連れてこられたのだった。
「いいこと!タカオ、あと三十分したらちゃんと帰るんだからね。・・・タカオ?」
返事をしないのでヒロミがタカオの方に振り向くとタカオは眠っていた。
「こいつぅ・・・!あたしが話してるってのに・・・!」
ヒロミは癪に触って思わず拳を固めた。・・・が。
「・・・ヒロミ、泣くなよ」
「(えっ?)」
「・・・こんな奴ら、俺がボコボコにしてやっからな。・・・俺が、ヒロミをいじめる奴らから・・・守ってやるからな」
タカオは目をつむったまま話していた。どうやら寝言らしい。
「(まさか・・・、あたしと会ったときの夢、見てるの?)」
タカオとヒロミが出会ったときはまだ二人が幼い頃だった。
当時、引っ越してきたばかりのヒロミは絶えずいじめに遭っていた。
ヒロミがいつもいじめられていると我先に飛び込んでヒロミを助けてくれたのがタカオだった。
そしていつも泣いていたヒロミを優しく慰めてくれてたのもタカオだった。
「(まだ、覚えてくれてたんだ)」
ヒロミはそっとタカオの頬に触れた。
「んぁっ!?・・・何しやがる、こらぁ!やめろって!」
「(夢の中で何されてんだか・・・)」
ヒロミは思わず口元を緩ませた。
未だ可愛らしい寝息を立てて眠っているタカオを見つめるとそっと耳元で囁いた。
「ありがとう・・・。タカオ」
ヒロミもタカオの横に寝転がるとそっと眠気に身を任せて目を閉じた。
初めて会ったあの時に夢の中だけでも一緒に戻れるように・・・。
寝付いたヒロミはタカオの最後の寝言を聞き取ることなく眠っていた。
「・・・ヒロミ・・・、大好きだぜ」
タカ&ヒロ小説でした。
カップリ投票で堂々の第一位になれたので記念として!
このカップリ結構好きです。
今回も趣味に走ってごめんなさい。春ネタは趣味に走りやすいです。